はじめに

平成16年に構造改革特区の申請の動きの中で、施設一体型の一貫校がスタートして、すでに5年が経過してきました。この間、学校の立地・環境・その学校の取組の歩みなどにより、一貫教育・連携教育において、例えば以下のように多様な形態が現れてきました。

 (1)小中学校の既存の取組のうち,ある学習活動と関わる教育内容に焦点化して小中連携を進めていく場合。

例えば、英語活動と外国語教育、言語活動の充実、算数・数学、理科、総合的な学習の時間(体系的に考えられた小中連携、合同)、ものづくり、食育、人権教育,図書館利用と読書活動,ほか、焦点化して取組む教科や活動内容を決めてそれに取組む場合。

(2)小中学校の既存の取組のうち,学習活動と関わる教育方法に焦点化して小中連携を進めていく場合。

例えば、プリントや小テスト活用など定着支援に向けた教育方法の連携、グループ学習を中心に学び合いに力点を置いた教育方法の連携(ICT活用含む)、ほか、焦点化して取組む教育方法を決めてそれに取組む場合。

(3)特別活動や学校行事(体育大会、合唱、文化祭、遠足…)に焦点化して小中連携を進めていく場合。

例えば、部活動の説明会・体験入部、合同体育大会や合唱コンクール、リーダー性の発揮や協調性などを培うために異なる学年の交流活動(@5年生と中1の組み合わせの取組、A6年生と中2の組み合わせの取組、B低学年と4年生の組み合わせの取組)、ほか、焦点化して取組む活動を決めてそれに取組む場合。

(4)家庭学習支援の仕方に焦点化して小中連携を進めていく場合。

例えば、1)宿題と教科指導の効果的な連携の取組(学習の仕方の発表会(生徒同士による、「私はこのような勉強方法や生活習慣の改善によって困難を乗り越えた」事例紹介と交流))、中学校区全体で活用できる「学習の手引き」、「生活の手引き」の作成、ほか、「子どもの悩みや時間の使い方などに保護者と共に応えていく活動」に焦点化して取組む場合。

 走りながら実践を試みている場合、また市町村の政策に基づいて小中連携・一貫教育をスタートさせた場合、取り組んでみて、「はたとこの方向でいいのか」と思うことがあると聞きます。勤務校の取り組み課題は何であり、現在どのような取り組みをしているか、その位置づけや特長を、上記の類型などを参考に、立つ位置の確認をする機会も必要です。方向性の確認につながるからです。また、あまり最初から盛りだくさんに取り組み、息切れしないようにするためにも立つ位置を見つめる試みが必要と考えます。

また出発点の明確化を忘れずに行い、取組によって、どのようにそれが変わったのかを教員チームがまずしっかりと見つめることが重要です。そして、子どもたちにも取組んだ結果、どのように自分たちは変わってきているかを示していく。さらに言えば、保護者にもその結果を報告し、例え小さくてもいいから取組の成果(あゆみ)を報告・共有していく試みが必要です。

 平成218月に開催された「小中一貫教育サミット」で各学校が発表されていた内容を見てみると、サミットが行われた当初に比べて変わった点が見られます。取組んだ成果が結果に現れていること(不安の解消や生活面の安定、つまり落ち着いてきた、優しくなっただけでなく、学力面にも影響が見られてきていること)、取組の洗練化に向けて、継続的な成果の評価、小小連携や教科部会の設置、外部評価なども検討されてきています。

 小中一貫教育は、時間がかかる試みであると共に,学校組織,学校間組織で教育をしていくことが求められる取組です。皆さんと共に子どもたちのために少しずつでも歩めれば幸いです。